ページタイトル セロトニン 

対象者: 一般向け

セロトニン 

 まずは内的脱同調,言葉はめんどくさいですが,時差ボケと似た話からはじめます。スライド1の左真ん中の図ですが、体温は朝が一番低くて午後から夕方は高くなります。左上ではヒトは夜は寝ていて,昼間は起きている,ことがわかります。次に相互の関係を見ていただいたいと思います。最低体温の後に目が覚めて,最高体温の後に寝る,こういった関係があります。子どもたちや赤ちゃんの手足がぽかぽかしてくると「眠くなったなあ」とみなさんも判断すると思いますが,手足がぽかぽかしてくるということは、体温が最高に達した後、手足の血管が開いて熱の放散が始められている状態です。つまり手足がぽかぽかして来るというのは最高体温に達したあとで、寝るのに適した時期ということになります。フリーランについては別のレポートで詳しく説明しましたが、たとえば洞窟に閉じ込められて、フリーランしてもはじめのうちしばらくは,睡眠覚醒も体温も同じ周期で動きますので,今言った最低体温の後に目が覚めて,最高体温の後に寝る,という相互の関係は保たれます。ところが,フリーランをある程度長く続けていると,突然,睡眠覚醒と体温のリズムがばらばらに動くということがわかっています。こうなってしまうと,今言った,相互関係は保たれなくなります。場合によっては,最低体温の後に寝なきゃいけなくなったり,最高体温の後に起きなきゃいけなくなったりします。こうなるともう体調がいいとは言えなくなるわけです。これを脱同調と言います。
 スライド2ですが、この状態を言葉で言うと様々な概日リズムの相互関係が本来と異なる状況、となります。説明を変えます,オーケストラを考えてください。オーケストラの指揮者が朝の光です。各パートが睡眠覚醒であり,体温リズムでありホルモンです。指揮者がきちんとしていれば,各パートはきちんと演奏しています。指揮者がいなくなります。はじめのうちこそしばらくは,横を見ながらそれぞれ演奏するかもしれませんけれども,指揮者の不在が長く続くとばらばらになってしまう。これが脱同調という状態です。わかりにくいと思うかもしれませんが,実はみなさんも経験済みです。海外旅行のときの時差ボケ,あるいは夜勤勤務,これは外的な要因で起きる脱同調ですが,起きてくる症状は全く同じです。眠りたい時に眠れず,眠っちゃいけない時に眠くなる。様々な作業能率が悪くなってしまう。食欲もなくなってやる気もなって元気もなくなってしまう。こういうことになります。夜ふかし朝寝坊だと,慢性の時差ボケ状態になってしまいますよ、というお話をさせていただいているわけです。
 身体を動かして疲れたらだれだって早く寝ますよ,という経験がおありと思いますが、今お話ししているのは慢性の時差ボケ状態のときにはやる気もなくなって元気もなくなってしまいますよという話です。つまり生活リズムと活動量というのは密接に関係しているという話をしているわけです。
 スライド3です。アクチウォッチという万歩計のようなものを1歳半のお子さん二人につけました。左下は千葉県船橋市の早起き早寝のお子さんの活動量です。左上は東京千代田区の夜ふかし朝寝坊のお子さんの活動量です。活動量が少ないから夜ふかし朝寝坊になるのか早起き早寝だから活動量が多くなるのか,このあたりはにわとりと卵の関係で何とも言えませんけれども,活動量と生活リズムというのは密接に関係しているというのはおわかりいただけると思います。そしてこういったものの背景に何があるのかというので,私が関心を寄せているのがセロトニンという神経伝達物質ということになります。
 スライド4です。セロトニンとは脳内に広く分布している神経伝達物質で脳内の神経活動の微妙なバランスの維持に重要ということがいわれています。このセロトニン系が調子が悪くなると様々な精神的な不安定が起きるということが分かっています。じゃあ,どうやったらこのセロトニンを高めることができるかというとリズミカルな筋肉運動,歩行,咀嚼,呼吸,しっかり手を振ってよく歩くこと。しっかりものを噛むこと,深呼吸すること,こういったリズミカルな筋肉運動がセロトニンを高めるのに大事だと言われています。つまり,夜ふかし朝寝坊で慢性の時差ボケ状態になってやる気もなくなって元気もなくなるとリズミカルな筋肉運動どころじゃなくなって,セロトニンの調子が悪くなって様々な精神的な不安定が起きてくるのではないですかということを申し上げているわけです。
 最近いろんな動物実験で,セロトニンの量を増やしたり減らしたりすることができるようになりました。スライド5に示すように、セロトニンが減らされると,実験動物は攻撃性が増したり社会性が無くなったり孤立化したりするということが分かっています。ヒトでも低セロトニン症候群,こんな病名を使っていわゆるキレる子に近いような状態を説明しようとしている研究者もいます(スライド6)。お猿さんは集団で暮らしています。そのお猿さんの集団の中の一匹にこのセロトニンを下げる薬を打ちます。そうするとセロトニンが下げられた猿は非常に回りの仲間に対していたずらばっかりしてちょっかいばかり出して,グループの中での地位がどんどん下がるのだそうです。逆にその集団の中の一匹にセロトニンを高める薬を打ちます。セロトニンが高くなった猿は,回りの仲間に対してサービスがよくなったり,毛繕いをしたりして地位が上がっていくのだそうです。ですから,動物が生きていくためには,セロトニンのレベルがある程度高くにあるというのが有利に働くのかもしれません。
 ではどうやったらセロトニンを高めることができるかと言えば,これはリズミカルな筋肉運動,歩行,咀嚼,深呼吸なんですけれども,もう一つ最近分かってきたのが,朝の光ということです(スライド7)。朝の光と言うのは繰り返し申し上げているように、生体時計に作用して生体時計の周期を短くするという非常に大事な働きがあるのですが,それにくわえてもう一つ,朝の光には心を穏やかにするセロトニンの働きを高めるという非常に重要な働きもあると言うことがわかってきたわけで,朝の光は二重の意味で重要だということになります。
 夜ふかし朝寝坊で慢性の時差ボケ状態になってリズミカルな筋肉運動ができないとセロトニン系が下がって様々な精神的な不安定,あるいは低セロトニン症候群が起きてしまいますよ、という話をしています。最近になってこのリズミカルな筋肉運動が心の問題だけじゃなくて脳の働きにも重要だということが分かってきました(スライド8)。エクササイズ,運動がブレインヘルス,脳の健康を高める,こういった動物実験も出てきていますし,中年期の運動量の多い少ないがある程度アルツハイマー病に関係するということも出てきています。中年期に運動していない方は,している方にくらべて3.85倍アルツハイマー病になりやすい,こういったデータも出てきていますし,小さい頃に身体をよく動かしていないと,将来的に慢性疲労症候群になりやすい、こんなデータも出てきています。いろいろと言ってきましたけれども,内的脱同調は慢性的な時差ボケで,背景にはセロトニンの問題があるんじゃないですかという話をしてきました。
なおセロトニンを昼間に与えると生体時計の位相が前進するという作用があること、また夜の光による生体時計の位相の遅れを抑えるという働きもセロトニンにはあることも報告されています(Yannielli P, Harrington ME. Let there be "more" light: enhancement of light actions on the circadian system through non-photic pathways. Prog Neurobiol. 2004 Sep;74(1):59-76.)。

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