ページタイトル サマータイムの懸念

対象者: 一般向け

サマータイムの懸念

 不毛なサマータイム導入議論(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180806-00000011-san-pol)がまた始まりました。その懸念については睡眠学会としてすでにまとめています(http://www.jssr.jp/data/pdf/summertime_20120315.pdf)が、今回よりコンパクトにまとめまてみました。
 サマータイムになると、まず朝ですが、冬時間の6時が夏時間では7時になります。言い換えると夏時間開始日の朝7時は夏時間開始前日の6時にあたります。同じ朝7時に起きるとすると、冬時間から夏時間に変わる際には1時間の早起きをしなければならなくなるのです。
 次に夜を考えます。冬時間最終日の18時が翌日の夏時間開始日では19時になります。まだまだ明るい19時になります。夏時間になって早起きした分だけ早寝をすれば睡眠時間は保たれますが、夏時間の19時はまだまだ明るいうえに、帰宅時間が最も暑い時刻にあたります。日中の熱射で暑さが未だ冷めない家で眠らなくてはならなくなり、寝る時刻が遅れ、冷房使用量もまします。要するに夏時間になると、早起き遅寝の睡眠不足を助長する可能性が高いのです。
 そして日本は世界に冠たる短睡眠時間国家です。寝ないと太ることはかなり多くの方が知ってくださるようになりましたが、睡眠不足がメタボリックシンドロームをはじめとして心身に悪影響を及ぼす危険因子であることも近年とみに理解が深まっています。実際日本よりも睡眠時間が長い国においてさえ、冬時間から夏時間への変更時に心筋梗塞や脳卒中の患者さんが増えること、交通事故が増えることが最近も報告されています。また睡眠時間短縮は理性や適切な判断といった人間らしさを司っている前頭前野の機能を低下させます。するとガマンができなくなります。その結果感情コントロールが難しくなり、イライラしたり、キレたりしやすくなり、トラブルが増えることが心配です。睡眠時間が短い日本へのサマータイム導入では想像以上の問題、例えば犯罪や自殺等が増えることをも大いに懸念します。
 オリンピックについていえば、確かに夏時間の朝7時は冬時間の6時ですから気温はやや低いかもしれません。しかし夏時間の19時は冬時間の18時でまだまだ暑い可能性があります。そもそも7月開催が大問題なのです。さらになぜ今のままの時刻で、例えばマラソンスタートを4時にするという解決策をとらないのでしょうか?夏に開催するのなら、昼間の競技は全て屋内。早朝(4-8時)と夜間(18-22時)を屋外競技に当てる、という対応こそが智慧だと思います。
 経済効果を謳っておいでの方もいらっしゃいますが、以前の試算よりもその効果幅は減っていますし、電子カルテ、交通システムをはじめとする種々のコンピュータシステムでの時間訂正の作業は極めて煩雑であり、膨大な人件費投入が必要でしょうし、かつリスキーでしょう。またサマータイムを実施しているEUでは、サマータイムは過去のものになるかも(https://www.nbcnews.com/news/world/daylight-saving-time-may-become-thing-past-europe-n893131)、という議論が始まっています。
 前頭前野機能がしっかりとした脳で冷静に議論したいものです。
参考文献
Sipilä JO, Ruuskanen JO, Rautava P, Kytö V. Changes in ischemic stroke occurrence following daylight saving time transitions. Sleep Med. 2016 Nov - Dec;27-28:20-24.

Manfredini R, Fabbian F, Cappadona R, Modesti PA. Daylight saving time, circadian rhythms, and cardiovascular health. Intern Emerg Med. 2018 Aug;13(5):641-646.

Manfredini R, Fabbian F, De Giorgi A, Zucchi B, Cappadona R, Signani F, Katsiki N, Mikhailidis DP. Daylight saving time and myocardial infarction: should we be worried? A review of the evidence. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2018 Feb;22(3):750-755.

Robb D, Barnes T. Accident rates and the impact of daylight saving time transitions.Accid Anal Prev. 2018 Feb;111:193-201.




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